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“救世主が現れた!“と期待したのも一瞬で、声の主を確認するや否や落胆に変わる。
そいつの名はサトシ。俺の幼馴染で親友ではあるが、卑怯さと臆病さにかけては右に出る者がいないと言われるほど、残念な男だ。
なぜ、そんな奴と親友なのか。俺自身もよくわからないが、昔クラスの女子に“アンタと付き合うくらいならカエルアンコウの方がマシ!”と振られたサトシがあまりにも不憫で、ゲームやマンガを貸して慰めていたらいつの間にか【親友】と豪語されるようになってしまった。
【親友】といいつつ、関係性は藤木くんと永沢くんのようなものである。
案の定、俺に声を掛けたサトシは隣にいるユキちゃん(ヤンキー)に気付くと、そのまま立ち去ろうとした。
『あれー? サトシ? 久しぶり! 元気にしてたか!?』と慌てて呼び止める俺。
だがしかしサトシ。聞こえないフリしてそそくさと走る。
あいつめ、俺がカツアゲされてると勘違いして関わらないつもりだな? この人でなしッ!
「おーいサトシ! マイフレンドサトシ! マサラタウンじゃない方のサトシ!」
後半、呼び止めるのに必死過ぎてわけ分かんなくなってきたが、少しでも時間稼ぎしてユキちゃんのユキちゃんをクールダウンさせたい。あわよくば、サトシを理由にユキちゃん家行きを阻止したい。
そんな企みもユキちゃんには見透かされていたようで、俺の手首への圧がハンパなく強化された。
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