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「助けを求めたところでムダだぜカズヤ?」
微笑みながら骨をへし折らんばかりに力を込めるユキちゃん。
「や、やだなー誤解だよユキちゃん! 俺はただ親友にユキちゃんを紹介しようと思っただけだよ!」
「その“親友”は俺にビビって逃げちまったんだからもう諦めろ。……絶対にお前を逃がすつもりはねぇんだ。今日だけは特別な日だからな……」
「……特別な日?」
もしかしてユキちゃんの誕生日かな? 付き合って数カ月経つけど、誕生日とか聞いた事なかったな。
「バッタの命日だ」
あーー……いや、うん、バッタとはいえユキちゃんにとって大切なペットだったもんな! でも、虫の命日って胸に響きづらいなぁ……。
「この日はアイツを失った日でもあり、アイツとひとつになれた記念日でもあるんだ。だから今日、お前とひとつになりたい」
真剣な目で俺を見つめるユキちゃん。太陽に照らされた赤髪はあまりにも眩しくて直視出来ない。
ユキちゃん……ロマンチックに言ってるけど、飼ってたバッタを佃煮にみたいに食べちゃったんだよね? そりゃ虫も何らかの栄養になるけど、それと“ひとつになった“という表現は違うんじゃないの? あとさ、前から気になってたんだけど、そのバッタは雄だったの? バッタに似てるだけで男の俺を抱きたいと思えるのがかなり不思議! 元々男が好きなの? それともバッタをそういう対象として見てたの? ねぇ、ユキちゃんマジそこどういう事なのか説明してよーーーー。
と、心の中で激しく突っ込んでみたけど、やっぱり口には出せなかった。
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