彼に対する最終であり最初の考察

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彼に対する最終であり最初の考察

「そういえば」  それから少し経った、ある日の帰り道。一緒に帰ることにもちょびっと慣れた、夏の始まり。  ふと思い出して私は訊いた。 「駐車場の猫、元気?」  あれ以来筧があそこに行くのを見たことがない気がするのよね。だからまぁなんとなく訊いたんだけど。  ……何故眉間にしわがよるのかしら。もしかしていなくなっちゃった? 「俺、猫好きに見える?」 「違うの? だって優しくしてあげそうじゃない」 「嫌いじゃないよ」  ……? 話がどうも噛み合わない。 「おかげさまで瀬生さんと話も出来たし一緒に帰れたし」  ?? 私が全然判らない顔をしていると、『彼』は至極あっさりとのたまった。  もはや私のウィークポイントと成り果てたあの微笑みで。 「あれは、嘘。」  ……だ、――――騙されたッ!! 〈『彼』/完〉
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