彼に対する最終判断そして……

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彼に対する最終判断そして……

 翌朝。  爽快なんだか不快なんだかいまいちよく判らない微妙な気分で起床しました。……なんというか、こう、……とうとう夢にまで筧電波が押し寄せてくるようになるとは、私ももう末期症状?  こういうのを世間様では何て言ったっけ。 えぇと、………………恋?  ――――。  まさか!!  今の結論を信じなくていいのなら私ノストラダムスでもアッラーでもあのいい加減なスピノザでもでも信じるわ。だってそんなつもりじゃないのただ笑顔が綺麗だなって……それだけなの!  そう、油断は大敵だって昨日学んだじゃない! いかんいかん、このままだと筧ペースに流されてしまう。よし、自分を強くもつのよ私。  さっきまでの思考はなかったことにしよう。もう見ちゃダメ話しちゃダメ!  忘却。  これ以上私を惑わせるな筧束沙!  瀬生綾、一世一代の決意です。        *  しかし。  意気込んで学校へ登校したものの、一度身についた習慣ってなかなかとれないんだなぁ、これが。  つまりですね、目が合うんです。ことあるごとに。  目が合うってことは、相手が自分を見てて、そして自分も相手を見てて……って結局眺めてるんじゃないか私ぃぃっ。  朝のあの決意はどこへ行ったの一体!?  も、もう少し、抑えられないんだろうか。  せめてこんなにばしばしアイ・コンタクトが起こらない程度には。  あぁでも最早惰性というか慣性の法則にのっとってるというか、とどのつまり気がついたら眺めてるんだからもう手の施しようがありません……。  このまま私侵されつくすんでしょうか……。  あぁ! こうなったのもすべては筧、あんたのせいだあぁ!  今日この瞬間からあんたは敵とみなす!  で、その敵は今どこに……?  あら。見失ってしまった。よりにもよってこんな時に! 確かにさっきまではこの廊下にいたはず……! 「瀬生さんさ、」 「ぅひゃぁっ!!」  背後!? 背後はズルいって言うか、い、いつの間に! 私はサーティーンじゃないのよ! 「あ。驚いた」 「――あっ、当たり前じゃないの!」  おかげで心拍数が限界寸前です!  ばくばくばく。心臓から喉が出るわ! 「ふぅん。そっか。ごめん、驚かせて」 「い、いいけど……別に……。それより、何言いかけたの?」 「うん。ずっと訊きたかったんだけど、瀬生さんて何でじろじろ見るの俺を」  ――はっ?  こ、これはマズイ。こんなこと訊かれるなんて予想してなかったから答えが……。ていうかバレてたんだ~……。ですよねー……。 「えっと、じろじろ、見てた?」  うわっ、しらじらしいなー。 「うん」 「そんなに、ずっと?」 「うん」  それってさしずめストーカーじゃ……ってことは、もしかして筧迷惑してた? だって考えれば考えるほど私ストーカーっぽいし!  うわ嫌だどうしよう。 「……嫌、だった?」 「ん?」  訊き返すんかい。  人が頑張って訊いたのに。しかも当人はあさっての方向いてるし。  そのうえ、いつのまにか人がいなくなってふたりっきりだし、またもや夕焼けで空は朱く染まってるし! 「あのさ、瀬生さんって……」  そこで筧は何故か言いよどむ。  私の質問は宙ぶらりんのまま。
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