クライマックス

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 翌朝、教室に入ってさりげなく直人君の机の中を確認すると、昨日急いで買って入れたチョコはなかった。部活が終わって受け取ってくれたとわかってホッとした。  その日、直人君は学校に来なかった。  『直人君が死んだ』と声が聞こえてきた。  私は即座に私の中の情報を整理した。昨日、要求された本命チョコを直人君は受け取っている。今日は休んでいる。それだけのことだ。 「なんだろう、この聞き取れない雑音のような声が増えている」 『死んだ』とか『葬式』とか不快な単語が教室の中をうごめいているのだ。昨日、直人君と付き合うのが確定して誰かに嫉妬されて、嫌がらせが始まったの? 「そんな悪質な嫌がらせなんて平気なのに」 それから3日たっても直人君は学校に来なかった。 「ひどい風邪でもひいたのかな」 私は、直人君の家は知らないし、電話番号やアドレスもバレンタインの翌日に堂々と交換できるのを楽しみにしていたから知らないのだ。それに嫌がらせの噂を流されている中で、誰にも聞けない。 「直人君、待ってるからね」  明日から春休みという日になっても直人君は姿を見せなかった。私が直人君と会えないから周りが嫉妬することもないのだろう、嫌がらせや噂はほとんど聞かなくなった。 「そんなに病気が悪いのかな……入院してるかもしれないな」  直人君の家を知らないから会えるきっかけは学校にしかない。私は毎日、部活が終わる時間に合わせて学校に行ってみた。サッカー部は練習しているけど、その中に直人君の姿はなかった。    そして、家に帰ってから毎日泣くことにした。 「もう、直人君死んじゃう病気で、もう会えないかもしれない」  もし直人君が死ぬようなことになっても、私だけでもしっかりしてあげなきゃ。どんな状況でも受け止めてあげられるように、先にたくさん泣いておかなきゃ。
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