時雨

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強いね。 僕は泣きながら言った。強いね、君は。本当に、強いんだね。 彼は僕の頰をぬぐい続けるだけで、何も言わなかった。 雨が降ってきて、小さな木の下にいた僕らを好き放題濡らしても、僕達は何も感じずに泣いていた。いや、彼が泣いていたかは知らない。彼の表情は僕のぐちゃぐちゃの顔とは比べ物にならないぐらい綺麗だったし、雨がその顔にも容赦なく降りかかっていたから。 それでも、泣いていたと思う。僕らは、2人で、泣いていたと思う。
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