時雨

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彼はそれから2年ほど経った時、急に学校から消えてしまった。町からも、僕らの日常からも。小さな町では、噂は腐るほど回った。夜逃げだの、親が病気だっただの、いや子供が不治の病だっただの、親が手を挙げていただの。 どれが本当かなんて知らなかったけれど、昨日まで確かに側にいた人が、こんなにも簡単にいなくなるということを僕は人生で初めて思い知った。 彼の住んでいた家の場所を、不自然なぐらい誰も知らなかった。大人は皆口を噤んでいた。必死に見当をつけて向かった場所はまだ土も柔らかい空き地になっていた。
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