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第3話 酔っぱらいはな、いいこと言うぞ
又吉爺さんのところから別の爺さんのところに行く。さっきの話はさすがに聞こえてないだろうと思っていると、
「で?行くのか葬式?」
と酔った顔で言われた。なんで聞こえてんだよ。地獄耳か。
「あー...あんま行きたくなくて......」
「なんでだ?会うと気まずい奴でもいるのか?」
「まあ...っていうか全員そんな感じですけど...」
オレがそう言うと少し驚いたような顔をした。
「...そうは見えねえけどなあ」
「生きてた頃はちょっと色々やっちゃってて...」
「なんだあ?カタカナの『ヤっちゃった』か?」
笑いながら下ネタぶっこんでくんなよ。ていうかほんとだったらどうするつもりだよ。
...まあどっちにしろか......。
「違いますけど...まあ言っちゃえば『いい奴』じゃなかったんですよ」
「お前が?いい奴じゃなかった?」
「...まあ、そうです 色々問題も起こしてきましたし」
「そりゃお前が悪い訳じゃねえ」
「え?」
「『周りが悪かった』きっとそうだ」
「いやでも...」
「これが『いい奴』じゃなかったら皆『悪い奴』じゃねえか」
赤い顔をしている酔っ払った爺さんからの言葉でも、そう言い切ってくれたことが嬉しかった。
「行きたくねえなら行かなくていい 会いたくない奴に会う必要なんかねえ 空気なんて読まなくていいんだ」
「...酔っぱらいがまともなこと言ってる...」
「酔っぱらいはな、いいこと言うぞ」
このあと、吐かなきゃかっこよかったのに。
いいこと言った口から出てくる汚い液体を、出来るだけ見ないように片付ける。
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