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第5話 あのときは、今は
「......やっぱそうかよ ...期待したオレがバカだったよ」
あいつらは...うちの家族は...やっぱりオレなんかどうでもいいと思ってたんだよ。
知ってたよ。
でも...それをこうやって、突きつけられたらさ.........ショックに決まってるじゃん。
...そういや爺さん達にはなんも言わずにきちゃったな...。せっかく忘れられてたのに...嫌なこと全部。
「...海......ああ、ここまできちゃってたか.........」
結構なスピードで飛んでたから気づかなかったけど墓場からそれなりに離れてしまっていた。大体5kmくらいか
「...そういや、初めて家出したときもここに来たっけな...」
あのときは夜だった。
あのときは生きていた。
あのときは...こんなじゃなかった。
いつからだろう、親が憎くなって、親がオレを憎く思うようになったのは。
...どうでもいいか。
空は快晴。波は穏やか。オレに一番似合わない天気だ。
...なんて言おうかな。爺さん婆さん達に。
......帰りたくねえな。
「おー!いたいた!」
「いたか!良かったなあ!」
「...へ?」
空を見上げると、10人ほどの爺さん婆さん達が"飛んでいた"。
「ったく、心配したぞ~」
「見つかってよかったねえ」
「んだなあ」
「みんな.........」
...なんて言ったらいいんだろう。
うつむいたまま、顔を上げられない。
「ほら行くぞ 新入り幽霊のお前さんには教えなきゃいけないことがたくさんある」
「どうやらまだ全員の名前も覚えてないみたいだしな?」
「おいおい、そりゃまずいなあ」
爺さん婆さん達は、そう言って笑った。
あのときは、生きていた時は最悪だった。
でも"今"は、そうでもないみたいだ。
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