よく似た君

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よく似た君

「先輩」 人ごみの中、聞き覚えのある声でそう呼ばれた。違和感があったのは、声と呼び方が一致しなかったから。同級生がいる中で、「ハルくん」なんて呼ぶのも気まずいだろうが。 「っ」 進路後援会に来たゲストOB。今の自分は、それ以上でも以下でもない。 「涼子(りょうこ)ぉ、お腹すいた。しかも眠い」 戸惑う自分をよそに、人が流れる。目に入る制服は懐かしいのに、自分は異世界にいるようで。 「ずっと寝てたくせに」 彼女は友人に笑いかけて、先を急いだ。 「知り合いか」 卒業式以来6年ぶりの元担任は、白髪が増えていた。 「いえ」 まだ、ぼうっとしている。あの子のことは母親のお腹にいたときから知っているが、親子というのはそこまで似るものなのか。  「先輩」 まるで、初恋の人が目の前に出てきたみたいに。
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