その日も彼女は出会わない。

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「おひさー!」 「久しぶりー!」 駅近くの交差点で大学時代からの親友と待合せ。 会うのは一年ぶりで、卒業してから既に五年以上経ってるなんて信じられない。 お互い年月分は老けた……いや、大人っぽくなってはいるけど。 「で、どうしたの?ミサから会いたいなんて珍しいじゃん」 私がココアを啜りながら尋ねると、ミサは勿体つけてホットコーヒーを持ち上げる。 そして、私は目を見張った。 「もしかして!」 「気づいた?私、結婚するの」 ミサの左手薬指には勝ち誇ったように指輪が煌めく。 「ウソ!どんな手を使ったの!?」 「どんな手って失礼ね。普通に出会って、付き合って、結婚よ」 「いやいやいや、大学生の時でさえ、気が強すぎて、言い合いで男泣かせてた女が何言ってんのよ」 「そんな過去の話、忘れたわ。ま、結婚は事実なのだから、ケイコも認めなさい」 私はまだ信じられずに、ココアのコップに口をつけたまま茫然としていたが、諦めてコップを机に置いた。 「……まさか、ミサに先越されるとは思ってなかった……。相手ってどんな人なの?」 「商社マンで年収八百万。趣味は料理で作ってくれてさ、それがすごく美味しいのよ」 「……写真!写真見せて!」 「いいわよ」
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