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♰2 堕胎2
医師が診察室から出ていったあと、ベッドに横たわる女のそばに黒い影がいた。それは文字通りそこにいた。いつからそこにいたのか? ひとの姿をしたような影だった。
影は上体を揺らすことなくリノリウムの床の上を滑るようにしてベッドの下座に移動した。そして、女のからだを覆うシーツの端を捲り、女の下半身をのぞき見た。
黒い影は中をじっくりと観察していた。ややあって、影は頭からシーツの中に潜りこんでいった。シーツは小山をつくったように膨らみ、影はその中を這うようにして蠢いていた。そして、なにか目標を定めたかのように動きをとめたあと、女体を覆ったシーツは平らになった。
女の瞼が痙攣をはじめた。手足が小刻みに動き、腹の奥底からにごったうめき声をあげだした。
それは、忌まわしい午睡から、目覚めていくようだった。
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