♰54 クージョ2

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♰54 クージョ2

 森義矢は、悪魔のイヌに”ひかり”を当てながら、この魔物のこころの内を見ていた。 「……心配するな。おまえの罪はいま”清め”られている。おまえはつぎに生まれ変わるときには、きっと”邪黒”とは(えん)のない世界で目を覚ますことだろう」 「クゥーン!?」  森義矢の右手から放たれている金色が黒い(もや)をその色に染めていった。金色の(もや)が霧散するように消えさった。悪魔のイヌも同時に消えさった。 「ふうっ」森義矢が息を吐いた。  麻里亜はベッドの上で静かにねむっていた。森義矢は麻里亜の髪を()き、穏やかな寝顔にもどった彼女の顔をたしかめた。 「これでもうだいじょうぶだ」  森義矢はおもった。  麻里亜に憑りついた悪魔はさった。あとは、彼女がいまのやつの”邪黒”にどのていどの影響を受けたかだ。もとの麻里亜にもどっていないのであれば、この場所は落ちつかないが、いますぐ”清め”をおこなわなければならないかも知れない。  森義矢はズボンのベルトを外そうとした。  突然、祭壇に仕立てた鏡台の鏡が割れた。地獄に堕ちた亡者の悲鳴のような声が室内で騒ぎたてた。  麻里亜の目が見開かれて赤く光っていた。 「そんな、ばかな?」  森義矢は身を引き、うろたえた。 「――神父さんよぉ。」麻里亜がしたり顔で森義矢を見上げた。「よくぞ、使い魔を退けたが……こんな雑魚(ザコ)でおわりではないんだよ」
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