28人が本棚に入れています
本棚に追加
♰54 クージョ2
森義矢は、悪魔のイヌに”ひかり”を当てながら、この魔物のこころの内を見ていた。
「……心配するな。おまえの罪はいま”清め”られている。おまえはつぎに生まれ変わるときには、きっと”邪黒”とは縁のない世界で目を覚ますことだろう」
「クゥーン!?」
森義矢の右手から放たれている金色が黒い靄をその色に染めていった。金色の靄が霧散するように消えさった。悪魔のイヌも同時に消えさった。
「ふうっ」森義矢が息を吐いた。
麻里亜はベッドの上で静かにねむっていた。森義矢は麻里亜の髪を梳き、穏やかな寝顔にもどった彼女の顔をたしかめた。
「これでもうだいじょうぶだ」
森義矢はおもった。
麻里亜に憑りついた悪魔はさった。あとは、彼女がいまのやつの”邪黒”にどのていどの影響を受けたかだ。もとの麻里亜にもどっていないのであれば、この場所は落ちつかないが、いますぐ”清め”をおこなわなければならないかも知れない。
森義矢はズボンのベルトを外そうとした。
突然、祭壇に仕立てた鏡台の鏡が割れた。地獄に堕ちた亡者の悲鳴のような声が室内で騒ぎたてた。
麻里亜の目が見開かれて赤く光っていた。
「そんな、ばかな?」
森義矢は身を引き、うろたえた。
「――神父さんよぉ。」麻里亜がしたり顔で森義矢を見上げた。「よくぞ、使い魔を退けたが……こんな雑魚でおわりではないんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!