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♰57 シスター・アイリーンと堀田幹夫3
シスター・アイリーンは崖から身を投げた。彼女はゆうに200メートルはあるだろう崖から真ッ逆さまに飛び降りると両腕を鳥の翼のように広げた。空気抵抗を利用して修道服を即席のパラシュート代わりにして滑空した。彼女は落下スピードがやや減速したところで崖の側面に足をついた。そして素早く岩肌を蹴ると、斜面の角度が60度はあろうかというところを猛ダッシュで駆けおりた。彼女の疾足が岩肌から粉塵を撒きおこし、彼女のうしろに砂煙が尾をひいた。
シスター・アイリーンは地面から数十メートルの地点に達すると、壁面をつよく蹴り、月光に照らされた森の上空を舞った。彼女のひと形の影が満月と重なり通りすぎる。彼女は森の杉の木にとりつくと、枝から枝へととび移り、森を抜け、藪の上でクルリと回転すると、<よろず屋の黒木>の店の前に降りたった。
「アーメン!」
その店舗兼住宅の二階の窓にはピンク色のカーテンが中の明かりで妖しく映っていた。
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