眠れぬ夜は誰のせい

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チッチッチッチッ…… ただ寝室に彼の気配が無いだけで、聞き慣れたはずの時計が秒針を刻む音も、私の苛立ちを助長させるものへと変わる。 ……チッ。 小刻みなその音と同じ長さの舌打ちをして、私は、まだ気だるさの残る身体をゆっくりと起こした。 眠りに落ちる前には、全身で彼の体温を感じていた。その温もりは、もう欠片も残っていない。 4月と言っても田舎のこの街は、まだ山肌に雪が残っている季節だ。素肌に羽毛布団だけで眠るのはさすがにまだ寒すぎる。 ベッドの下にまるで脱け殻のようにくしゃっと丸まっていた下着を身につけて、スウェットを着ようとして…… 思い直してクローゼットからジーンズとトレーナーを取り出した。 彼の行き先は分かっていた。 ーー きっと、あの橋の近くにいるはずだ。
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