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そして何も言えないまま、引き継ぎの日になった。
2日で引き継ぐのだが、新人の竹田が最終日どうしても都合が悪いとやらで明日、明後日で引き継ぎ、最終日は一人で配ることになった。
残りは、あと3日。
「しんぶんのおにいしゃーん。」
新人の竹田と共に現れた僕を見て、かのんちゃんはブラウンの瞳をより一層輝かせた。
僕は竹田に、
「ここは僕が配ります。」
と言い、しゃがみ込んだまま、かのんちゃんが駆け寄るのを待った。
「はい。夕刊です。いつもありがとうね。」
僕が言うと、竹田の目を気にしてか、
「ごくろうしゃまです。」とだけ言ってキラキラした目で、ニコニコ笑っていた。
いつものやり取りは、きっと二人だけの秘密なんだ。
そして今日は見送らずに、
「おかあしゃーん。ねぇねぇ。きょうはおにいしゃんがふたりもいるよー。」
と叫んで、カーテンの向こうへ走り去った。
「めちゃめちゃ可愛いっすねー。先輩の彼女っすかー?」
と竹田にからかわれた。
「だろ?…後はよろしくな。」
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