Fairytale Sunset

6/20
前へ
/20ページ
次へ
 薄暗くなった部屋を耳が痛くなるほどの静寂が包んだ。  体中の血の気が引いていくのがわかる。  頭がクラクラして来た。 「え、どういう意味?」 「言葉通り。もう、別れたいの。」  ユイの心はもう、ここにはないし、戻ってくることもないって事は何となくわかる。  でも…。 「何で?どうして?僕の何が悪いの?」  あー。頭では分かっている。  これは逆効果だ。  何しろカッコ悪い。  だが、心のブレーキは効かず言葉だけが先走る。 「嫌だ。別れたくない。やり直そうよ。悪い所は僕が直すよ。」  ユイもついにシビレを切らす。 「そういう所。悪いのは私なのに、何か責められている感じがするの。好きな人が出来たの。リヒトは優しいけれど、そういう所に追い詰められちゃうの、私。彼といるとそういうのが無くて。罪悪感みたいなのが無くて。ただただ好きでいられるの。もう、分かったでしょ?もうこれ以上は無理なの。さようなら。」  一気にまくし立てると、自分のショルダーバッグを持ち、出て行った。  合鍵は置き去りにされたままだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加