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薄暗くなった部屋を耳が痛くなるほどの静寂が包んだ。
体中の血の気が引いていくのがわかる。
頭がクラクラして来た。
「え、どういう意味?」
「言葉通り。もう、別れたいの。」
ユイの心はもう、ここにはないし、戻ってくることもないって事は何となくわかる。
でも…。
「何で?どうして?僕の何が悪いの?」
あー。頭では分かっている。
これは逆効果だ。
何しろカッコ悪い。
だが、心のブレーキは効かず言葉だけが先走る。
「嫌だ。別れたくない。やり直そうよ。悪い所は僕が直すよ。」
ユイもついにシビレを切らす。
「そういう所。悪いのは私なのに、何か責められている感じがするの。好きな人が出来たの。リヒトは優しいけれど、そういう所に追い詰められちゃうの、私。彼といるとそういうのが無くて。罪悪感みたいなのが無くて。ただただ好きでいられるの。もう、分かったでしょ?もうこれ以上は無理なの。さようなら。」
一気にまくし立てると、自分のショルダーバッグを持ち、出て行った。
合鍵は置き去りにされたままだ。
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