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次の日。
暗く、重い足取りで新聞販売店へと向かった。
学校もサボり、何もしたくなかったが、配達は責任があるからサボる訳にはいかない。
店長へ辞めたい旨を伝えたが、急な事なので次の引継ぎが決まるまで数週間かかるとの話だった。
さて、と。
慣れた手つきで、いつものように準備をし、いつものように重い夕刊の束を抱えて、いつもの古い自転車へ詰め込む。
ギィー。
自転車は情けない音を上げた。
僕はゆっくりと漕ぎ出す。
いい加減おんぼろで、歪んでいるせいで油断して気を抜くと道路側へはみ出してしまう。
「僕みたいだな。」
苦笑し、気が乗らないまま夕刊を配達してゆく。
まだ午後の熱が残るが、雨も少なく配達にはいい季節に入ってきた。いつものように機械的に配るが、ペダルを漕ぎ、頬をすり抜ける心地よい風を受けると、徐々に気が晴れてきた。
夕刊配達は人に遭遇する確率が高く、気のいいおばさんが「いつもありがとう。」と言ってくれたり、「ごくろうさん。」などと声を掛けてくれる。いつものように愛想よく返事をする。昨日振られたばかりだなんて誰も思いもしないんだろうな。苦笑する。
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