セカンドキス

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「僕は若宮さんが好きです。他に好きな人はいません。どうしてそんなことを言うのかわかりませんが……僕は二股なんてする器量もありませんし……気も多くありません。こんな僕が誰かを天秤にかけるような……そんな若宮さんの他にそんな人はいません。男の僕が告白なんて気持ち悪いと思うでしょうが、でも若宮さんが好きなんです」 声を詰まらせそれでもちゃんと気持ちを伝えてくれるその涙は偽りなどないとわかっている。斎藤はそんな不埒な人じゃないことぐらい毎週側で見ていた時臣はわかりすぎるくらい知っていたはずだった。 自分の嫉妬をぶつけて斎藤が傷つくことくらいわかっていても、自分の保身の為に馬鹿な自分に反吐がでる。誰かを好きになることを恐れそれでも誰かを好きになってしまう。どうせまた……と思う気持ちはいつのまにか吐き出せない代わりに好きになった人の気持ちを決めつけようとまでしている。 ただ斎藤が好きで、斎藤にも同じように好きになってほしいだけなのに。失うことを恐れて踏み出せない気持ちは臆病な歪な心を作りだしてしまった。 「斎藤さん!ごめん!こんなことが言いたかった訳じゃないんだ。ただ、今日見てしまって……勝手に斎藤さんは俺のこと興味を持ってくれてるもんだと思ってたから……ヤキモチ妬いただけで……」 「あ……やっぱり今日きてくれてたんですね。若宮さんのことだから事前に連絡下さるはずなのにおかしいなって思ったんです。今日来てたのは従兄弟です。それに、若宮さんも知ってる人ですよ」 「俺が……知ってる人?」 「僕の個展を若宮さんに教えた人ですって言ったらわかりますか?」 時臣に個展を教えてくれたのは行きつけのバーのマスターだ。 「……マスターと従兄弟……?」 「彼は事故で僕の左脚と一緒に無くした両親の代わりに僕の世話をしてくれてているんです。絵を描いてみたらと進めてくれたのも彼です。でも彼に恋愛感情なんてありません。良くしてくれてますが……僕は若宮さんと一緒にいたいと思ってます」 マスターは自分の従兄弟の個展を俺に教えてくれたのか? 斎藤の気持ちが自分に向いている。形を見せその姿を現したような感覚に、目の前の斎藤に手を伸ばした。それを受け入れるようにぎこちなく身体を時臣に預けてくる華奢な斎藤の身体を柔らかく抱きしめた。
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