セカンドキス

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 どれくらい時間が経ったのだろうか。日頃の疲れと泣き疲れたのか、ウトウトとし始めた時だった。いきなり鳴ったインターフォンの音で覚醒した。 慌てて画面を覗けばそこには斎藤の姿があった。家は教えていない……いや、最初に来客名簿に記入したことを思い出した。 あの時はダイレクトメールでもくれるのかと、斎藤の絵で綴られるものが送られてくるのであれば嬉しいと心待ちを予測しながら書いたことを思い出した。 受け答えはせず玄関へと向かい大きく新呼吸を繰り返した。斎藤の姿を見ただけで時臣の鼓動は慌ただしく打ち始めた。気持ちの整理とはどれだけの時間をかければできるのかと途方にくれそうになる。 心は真逆で、足の悪い斎藤がここまで自分の為に訪ねて来てくれたことが時臣の心を鷲掴みにしキュンキュンと締め付ける。 鍵を開けドアを開けると不安そうに立っている斎藤の姿が目の前にあった。 「具合悪いのに来てしまってごめんなさい。寝てましたか?起こしたならごめんなさい」 いつもになく早口で斎藤は話しかける。きっと初めて訪ねる時臣の家に緊張しているのだろうと伺える。 「ウトウトしてました。でも大丈夫ですよ。わざわざありがとうございます。さあ、入ってください」 ドアで隠れて見えなかった斎藤の右手には杖があった。駅から少し歩かなけ ればいけない距離があるこのマンションはタクシーは乗車を嫌がる。そう考えればきっと斎藤は歩いて来たんだろうということになる。 招き入れソファに座らせてキッチンへと向かった。 「若宮さん!横になっててください!僕がしますから!」 立ち上がった斎藤はラグに足を取られ転びそうになった。義足が絡まったのだろう焦った時臣はその身体を慌てて受け止めた。 斎藤の身体は予想以上に軽かった。片足の重みがないにしても男だとは思えない程、華奢だった。いつも身体のラインの出ないパーカーに義足のためだろうゆとりのあるチノパンを履いている。 それはこの華奢な身体を隠す為でもあったのかもしれない。 「す、すいません!若宮さん大丈夫ですか?」 斎藤が転びそうになり時臣が受け止めた。それなのに人の心配を咄嗟に出来る斎藤は本当に心から優しい人なのだ。
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