セカンドキス

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この人の魅力を知っている人がいる。自分より先に知り合って斎藤が惹かれた人が…… 数時間前の情景が浮かび時臣の胸を締め付けた。こんなに好きになってしまっていた事実を知らしめられた気分だ。 「斎藤さんこそ大丈夫ですか?俺は大丈夫。座ってて今お茶淹れますから」 もう一度斎藤をソファに座らせる。今度は何度か確認するように振り返った。申し訳なさそうに斎藤は時臣の姿を目で追っている。その姿が可愛らしくて時臣は持て余すこの気持ちに困惑していた。 斎藤のそばに居れば整理のつけようのない気持ちをどこからどう整理していいのやら見当がつかない。 これ以上好きになってはいけないと頼りなく踏み止まっているだけだ。こうやって斎藤のそばに居れば、そんな頼りない意思は何処かへ吹き飛ばされてしまう。 ローテーブルにカップを置く。斎藤はブラック派だ。甘いものが苦手だと言った言葉でさえ記憶の引き出しにちゃんとしまってある。 「ありがとうございます。何しに来たんだろう、若宮さん具合悪いのにすいません」 途中で買ってきたのだろうビニール袋から即席のお粥、コーンスープ、プリンなど何人で食べるのかと思うような量のものをテーブルに並べた。 「何が好みなのか聞いておけば良かったって後悔しました。沢山会ってたのに若宮さんの好きなもの知らなくて……」 一人分を開けソファに座れば、いつものように人懐っこい笑顔を見せる。斎藤にとっては自分は少し気の合う友人の枠なのだろう。 恋人にはなれない枠に収められていることに落胆してしまう。独りよがりの所謂片思いだ。 もう 整理しようなんて考えは何処かに消え、落ち込む気持ちを理性で保っているだけだった。 「疲れが出ただけなので、遠いのにこんなところまでありがとうございます」 別に嫌味のつもりで言ったつもりは更々なかった。だが、斎藤の表情から笑みが消えた。 「僕こそ……若宮さんと会えないって思ったらいても立っても居られなくて……押しかけてすみません。これ食べてゆっくり休んでください」 顔を歪め立ち上がろうする斎藤の腕を無意識に掴んでいた。そんな顔をさせたかったわけではない。言い方を間違えたのだと時臣は焦った。
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