セカンドキス

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「僕は何も持ってないけど……若宮さんを愛する気持ちは誰にも負けないくらい持ってる。重くても、それは幸せの重さですよ。いっぱい僕に愛されて?僕をいっぱい愛してください」 お互いの頬を伝う涙は嬉し涙へと変わる。斎藤の涙を指先で拭えば同じように斎藤の指先が時臣の頬に触れた。引き寄せられるようにその薄い唇にキスを落とした。 初めて抱きしめ、初めて斎藤に触れる。壊れて消えてしまいそうな錯覚は背中に回った斎藤の体温に安堵と嬉しさを覚える。 何度も諦めながらも愛されたいと願った。それを受け止めてくれる斎藤を誰よりも大切にしたいと誓う。 触れ合った唇から自然に求めるように舌を絡ませた。昂ぶっていく熱に斎藤を求めてしまう。 ぎこちなく必死で応えてくれる斎藤の経験値が垣間見え、ただ求めてくれていることに嬉しさが込み上げる。 「待って、僕は慣れてなくて……」 掠れた声さえも時臣の体温を上げ昂ぶらせた。 「大丈夫だよ。俺で慣れてくれれば……」 そう言えば首元まで赤く染めた斎藤は肩先に顔を埋める。 「その余裕にムカつきますけど……これから僕にそのありったけの気持ちをぶつけてください。男は度胸ですよ。僕は何があっても逃げないから……」 斎藤には全てお見通しなんだと眉を下げる。それはそうだろう。半年の間毎週時臣を見てきた斎藤が何も感じていないわけがない。きっと抱え込んでいる重さと臆病な時臣を優しく包むように告白してくれたに違いない斎藤の包容力は計り知れない。 そんな斎藤に気付くことさえ出来なかった時臣は何も見えないほどに斎藤に夢中だったのだ。 過去を思い出し時臣は感慨深く思った。幾度の辛い別れは斎藤と出会う為の試練だったのかもしれない。斎藤と出逢う為の試練だったのならそれはいい思い出になるのかもしれない。 そんなことを思いながら全身で自分を求めてくれる愛おしい人を抱きしめ、時臣はじわじわと湧き上がる幸せを噛み締めていた。
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