セカンドキス

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   翌日、マスターから貰ったチケットを手にちょっといい感じだと言ったカフェに来ていた。 南国を思わせるようなトロピカルさもあるのに落ち着いた空間を見せている。席と席との空間も程良い。座り心地の良い椅子に真っ白な洒落たテーブル。個展がなくてもまた来たいと思った。 ウエイターに珈琲を頼み、個展と称されるその一角に足を向ける。テラスから眩いほどの光が差し込み飾られている絵を引き立てているようで誘われるように辿り着く。画用紙ほどの大きさの絵や、ポストカードサイズの絵が所狭しと並べられていた。 あの洒落たフォトスタンドは絵とセットで売られていたのだと知る。絵に似合う色々なフォトスタンドが並べられている。作家のこだわりだろうか。淡い色の絵にシンプルでそれでいて安っぽくない物が並べられている。 壁に添えられた絵を一枚一枚ゆっくりと見ていく。デジタル画のものもあれば、色鉛筆で描かれたものもある。それはどれも繊細で細かなところまで描かれてある絵。心が洗われるような吸い込まれていきそうな絵。カフェの店内なのにここだけがまた違った空気を創っている。 何故か見たことのある風景のようでどこか懐かしく心を癒してくれる絵ばかりだ。珈琲を頼んだことも忘れ見惚れている、そんな時臣を嬉しそうに見ている人影に気づく。そこには微笑む一人の男性がいた。 「絵を見てくださってありがとうございます」 優しく語るような耳障りの良い声。その容姿との違和感のない声の主が微笑んでいた。 「素敵な絵ばかりで魅入ってしまいました」 この絵を描いた人物なのだと思った。それほどにその容姿も声もこの絵達とぴったりとパズルのように嵌っていく感じがした。 そばに近寄ってくる彼は片足が不自由なのだと気付く。ゆっくりと近寄ってくるその姿は何か迸るオーラのを放っているように見え魅入ってしまった。 「気に入ったものがあれば、お譲りできます」 そう、そばで囁いた彼はまた、優しく時臣に微笑んだ。 「全部欲しいくらいです。部屋に飾って癒されたい……」 目の前にある、チケットの絵を見つめてそう呟いていた。
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