セカンドキス

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 人を愛し愛情を注げば愛してもらえるものだと思っていた。   母を愛し自分の愛情を惜しむことなく向けていた幼い頃。背を向ける母の背中にしがみつきその温もりは愛されているのだと思い込んでいた。 「だからさ、時臣はキモイんだよっ。俺ら男同士だし、そんな構って欲しくねーし!お前にそんなこと望んでねーから!」  肩を思い切り小突き、別れを告げる先程まで愛し合っていると思っていた恋人。 また間違ってしまったのか……そんな後ろ姿を見えなくなるまで見つめていた。 もう涙さえ出てこない。自分を愛してくれる人ではなかったと諦める自分はもう誰にも愛されないのではないかとさえ思えてしまう。   誰かに愛されたい。愛した分だけ自分も愛され互いの愛で満たされたい。 そう思って精一杯愛してきた。   母の愛が自分に向いていないと知った時。愛欲な姿でまみれ男に抱かれる母を拒絶した自分。そして男に捨てられボロボロの母を見捨てた。 あの光景が脳裏に過ぎり、消えることがない見せかけの愛を求めた残骸。いつしか忌々しい 母の情事がトラウマになってしまったのか女を好きにはなれなかった。 同性の男にばかり興味を持つ自分。それに抗うことなく同じ嗜好をもつ相手に愛を注ぐようになった。そこに真実の愛がないと分かっていても好きになれば尽くしたい。相手に喜んでもらいたいと尽くしては捨てられる。 母となんら変わりはないのかもしれない。ただ唯一違うのは、溺れることがないというところだろうか。もう求めることをやめ、尽くすことで満たされていた気がする。相手の喜ぶ顔が満たしてくれる。だが自己中心的に相手に尽くすだけ尽くし何も求めない。相手にすれば居心地は悪かったのかもしれない。
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