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「それ以上近づかないでくれるか?」
朝陽が夜々斗へ向けようとする視線を遮って立つ優樹が口を開いた。
生徒会にいたあの頃とは違い、朝陽に同調して夜々斗を責めるような者はここにはいない。
「なんでお前にそんなこと言われないといけないんだ! 俺はよーちゃんと話してんだぞ!」
「ここは夜と約束していた友人同士の勉強会の場だ。
友人を代表して言うけど、君の席はない。」
背の低い朝陽は優樹に見下されながらも一歩も引かず、むしろ優樹を睨みつけて言い返す。
優樹も、夜々斗には決して見せないような侮蔑を込めた視線を向け、固く冷たい声で返す。
あの頃は、仲間だと思っていた誰一人、夜々斗の味方をしてくれることはなかった。
「よーちゃん、ひどい! 俺が仲良くしてあげようとしてるのに! こんな親衛隊なんかといておかしい!」
痛みを増す頭を押さえながら重い口をこじ開け、夜々斗は盾になるように立つ優樹の背中越しに反論した。
「ここにいるのは、私の友人たちです。ひどい言い方を、しないでください」
あの日、夜々斗が生徒会から追い出された日、朝陽の言葉に何一つ言い返すことができなかった。あれ以来、朝陽と話すのは今日が初めてだが、ついにはっきりとやめてほしいと言えた。
言葉じりが震えてしまったが、確かに朝陽に言い返すことができた。
“この瞬間、間違いなく月は輝きを増し、雲の隙間から辺りを照らし出していた
周りを囲んでいた星たちも月とともに煌めいた”
しかし返ってきたのは更に夜々斗を批難する言葉だった。
「ひどいのはよーちゃんだろ! 皆に捨てられても全然気にしてないし!
こんな取り巻きと楽しくやっててあいつらが可哀想だ! 最初から仲間だと思ってなかったんだな!」
朝陽の言葉は、悲しみに負けまいと変わろうとしていた夜々斗の心をいともたやすく折ってしまった。
────こんなにも悲しい状況で、笑おうとしていた僕は間違ってた? また、彼らを傷つけてしまった……?
……やっぱり、僕は、前を向いちゃいけない。
“自らを覆い隠そうとする暗く厚い雲に抗おうとしていた月だったが、流れ星の言葉にあっという間に負けてしまった
夜はたちまち暗さを深め、大粒の雨が降り出した
雨は振り止むことなく、暗闇に月も星もかき消されてしまった”
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