癒やされる心

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──────────── ──────  いやだ、くるしい、やめて。  そう言っても、やめてくれない。  力の限りで抵抗してもお兄ちゃんの力に敵わない。  両方の手首を纏めて掴めてしまう手の大きさにも、力の強さにも恐怖を感じる。  遠慮なんかまるでなしにぎりぎりと食い込む指の感触が、逆らうなと伝えてくる。  痛い、  痛いのに、離してくれない。 「よーちゃんが悪いんだ」  中途半端に脱がされて素肌が晒された腿にもう片方の手が触れてくる。ぞわぞわと鳥肌の立つ感覚が止まらない。  そんなところ、どうして。  なんでそんなところを触るの。  こんなの信じたくない。  なんでと聞いてもやめてとお願いしても、お兄ちゃんは僕が悪いんだと言う。  あんなに優しかったお兄ちゃんがこんなに変わってしまうなんて、僕は何をしてしまったんだろう。  考えても全然わからない。  お兄ちゃんは頭がよくて、優しくて、いつもよーちゃんは天使みたいで可愛いなぁって頭を撫でてくれた。いい子で偉いなぁって、自慢の弟だって、だから僕が好きだよって、沢山褒めてくれた。  そうやっていつも笑ってたから、どこで悪いことをしてしまったのかわからない。  理由がわからないことすらも、僕がいけないんだと言われるたびに、どこかがすごく痛い。  もっとよく見ていたらわかったかもしれない。  もっとちゃんと聞いていたら何か言っていたのかもしれない。  そうしなかったから、こんな僕だから、お兄ちゃんは変わってしまったんだ。  太腿の内側を触っていたお兄ちゃんの手が少しずつ上にのぼってくる。  その行きつく先を想像してしまって、逃げたくて。  抵抗してるのに、僕の力の無さを痛感するだけ。  言葉でしか抵抗できない。  でも返ってくるのは僕が悪いっていう言葉だけ。 わからないよ。僕が悪いのはわかったけど、何がいけないのかわからない。  お兄ちゃんが苦しいのはわかったけど、その原因がわからない。  僕がお兄ちゃんを苦しめてしまったのに、いつそんなことをしてしまったのか……。  痛い。  僕のせいで、僕のせいなのに、痛い。痛いよ。  お兄ちゃんを怖がるなんて、する資格もないはずなのに。  元に戻ってほしいなんて、考える資格もないはずなのに。 「ごめんなさいっ」  でも、どうしても怖い。  指の先から温度がなくなっていく。  喉がひゅっと音をたてて、息を吸うのすらうまくできない。  耳のすぐそばでドクドクと音が鳴ってそれが恐怖心をさらに煽る。
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