癒やされる心

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 どうしてだろう。  どうして僕はこんなことになってるんだろう。  わからないけど、  わからないから、ごめんなさい。 「お兄ちゃん許して、お兄ちゃんっ!」  何もわからない。  それでも許しを乞う僕はなんて馬鹿なんだろう。  何を言っても、上辺の言葉は届かない。  何を言えばいいんだろう。  あったはず。  正解が、あるはずで。  た、……?  ……?  今誰に言おうとしてた?  そもそも今、何を考えてたんだっけ。  なんだっけ。  あれ? 何か、忘れちゃいけない何かを。   ぼ、くは……?  違う、僕はお兄ちゃんに言うべき言葉を探してたんだ。  僕がお兄ちゃんを苦しめてる。  お兄ちゃんがすごくすごく怒ってる。 「ごめんなさいごめんなさい!」  なんでこんなに痛いの。   が痛い。  大好きなお兄ちゃんが、無理矢理触ってくるから。  お兄ちゃんが僕のせいで変わってしまったから。  でも僕の何が悪いのかわからないから。  こんな僕が大嫌いだから。  嫌がってしまう僕がおかしいから。 「よーちゃんが悪い」  お兄ちゃんの言うとおり。  僕は、どうしたらいいんだろう?  そこ、触らないで。  さっきから、なんで、うまく、力が入らないんだろう?  痛い。何かがすごく痛い。  こんな僕は、だいっきらい。  ごめんなさい。  いやだ、もういやだ。痛い。ごめんなさい。なんで。ごめんなさい。  僕じゃない。僕の、意思じゃない。  僕はお兄ちゃんにこんなことされたくない。  ……でも悪いのは僕で、お兄ちゃんには苦しんでほしくなくて。  それで、  それで……?  ああ、僕が嫌がるからいけないのか。僕の意思なんて、気にして、痛がってるからいけないのか。 「夜!」 ────── ────────────
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