48人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
「三度の飯より酒が好き! 酒代を稼ぐために働いているオレサマを差し置いて、酒に酔った会話なんかしてるんじゃあねえぞお?」
蓮っ葉な語気で話しかけて来るこの男は、徳憲にも遠慮なく絡んで来た。
徳憲も、こういう人物は嫌いではない。裏表がないので気を置けないし、フレンドリーで捜査協力もしやすいのだ。
いざというときは酒を奢れば簡単に乗ってくれる、という点も付き合いやすい。
ただし酒乱には違いなく、絡み上戸かつ陽気な世話好きでもあるため、酒癖の悪さから女性には人気がない。
本人も完全に割り切って「女なんぞに金かけるより、酒と飯に費やした方が有意義だ。自分の血肉になるからなあ」と豪語している。
もう四〇歳近いのに独身貴族を気取っているのも、そんな性格ゆえだろう。
「アルコール検査ならオレサマが詳しく見てやんよお? 死体の胃袋から血液まで、はたまたコップの容器からビール瓶まで、酒が付着した物質ならくまなくさあ!」
彼の属する第二化学科・化学第四係は、薬物やアルコールの鑑定に一日の長がある。
麻薬や毒物、睡眠薬と言った、人体に影響のある物質の化学反応を調べることもある。
酒好きな男がアルコール分析を生業にするのも因果な話だが、彼自身が望んでこの職業に就いたのだから、これぞ天職と言うのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!