第四幕.いてつく世界で死に急ぐ

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「三度の飯より酒が好き! 酒代を稼ぐために働いているオレサマを差し置いて、酒に酔った会話なんかしてるんじゃあねえぞお?」  蓮っ葉な語気で話しかけて来るこの男は、徳憲にも遠慮なく絡んで来た。  徳憲も、こういう人物は嫌いではない。裏表がないので気を置けないし、フレンドリーで捜査協力もしやすいのだ。  いざというときは酒を奢れば簡単に乗ってくれる、という点も付き合いやすい。  ただし酒乱には違いなく、絡み上戸かつ陽気な世話好きでもあるため、酒癖の悪さから女性には人気がない。  本人も完全に割り切って「女なんぞに金かけるより、酒と飯に費やした方が有意義だ。自分の血肉になるからなあ」と豪語している。  もう四〇歳近いのに独身貴族を気取っているのも、そんな性格ゆえだろう。 「アルコール検査ならオレサマが詳しく見てやんよお? 死体の胃袋から血液まで、はたまたコップの容器からビール瓶まで、酒が付着した物質ならくまなくさあ!」  彼の属する第二化学科・化学第四係は、薬物やアルコールの鑑定に一日の長がある。  麻薬や毒物、睡眠薬と言った、人体に影響のある物質の化学反応を調べることもある。  酒好きな男がアルコール分析を生業にするのも因果な話だが、彼自身が望んでこの職業に就いたのだから、これぞ天職と言うのだろう。
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