47人が本棚に入れています
本棚に追加
/229ページ
寝室の扉は、開かれたままだ。外はダイニングへ繋がっており、ふわりとコーヒーの香りが漂って来た。
誘われるように悦地はフローリングの床へ足を下ろし、そちらへ歩く。
案の定、そこに愉本は居た。
ダイニングの中央、テーブルの上に行儀悪く尻を乗せた愉本が、コーヒーカップを口に付けている。すでに服を着ており、艶めかしい肢体は拝めなかった。化粧はまだしていないが、それでも彼女の横顔は女優顔負けの美貌を見せ付ける。
背中まで届く茶色い長髪には寝癖も見られたが、それもまたアクセントになっていて美しい。髪が窓から射し込む光を浴びて煌めくたび、幻想的な女神像に感嘆した。
(女神……いやァ、とんでもない。彼女は小悪魔、サキュバスなんだよねェ)
悦地はかぶりを振って、誘惑を払いのけた。
すっかり魅了される所だった。彼女はサキュバスだ。男を虜にする魔性の淫魔。欠伸を噛み殺す仕草すら愛くるしい。
などと見とれていると、愉本もこちらに気付いたのか、ゆっくりと首を巡らせた。
「おはよ~、エッチ休憩クン?」
「おはよォ……って、その呼び名はやめてくれないかィ? 確かにボクは悦地憩……字間に『休』を入れれば『エッチ休憩』に聞こえるけどさァ」
最初のコメントを投稿しよう!