あき

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「行ってきます」 決まった時間に出かけていく君を、見送ることが日課になった。 縁あって一緒に暮らすようになってから、これが三回目の春だ。 巡った季節に同じものは一度もなくて、最初は戸惑うことも多かったけれど。 初めて知ることが沢山あった。 優しい声。温かい手のひら。 君と過ごす部屋の明るさ。美味しいご飯。 何より、幸せそうな君の笑顔を見るだけで、俺はこれ以上ないくらい幸せだった。 だから君の元気がないときは、「おはよう」や「ただいま」の一言でもすぐにわかった。 そんなときは片時も君の傍を離れずに、早く元気になってくれることを願った。 やがて君は俺の気持ちに気付いたように、また笑顔を見せてくれるようになるから。 今までもこれからも、きっとこうやって二人で生きていくんだと思っていた。
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