あき

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あき

木枯らしの吹き荒ぶ、十月のある日。 初めて会った君は人目もはばからず、街路樹の根元にうずくまっていた。 そこで、静かに泣いていた。 頭上では風に揺られた葉がぶつかって、ずいぶん騒々しい音を立てているけれど。 耐えるようにジッと、その場で泣いていた。 自分と同じ匂いがした気がしたんだ。 それが何の匂いかはわからなかった。 涙の匂いか、悲しみの匂いか。はたまた、心に宿ったほんの少しの憎しみか。 そのどれであっても、どれでもなくても、もう心はとらわれていた。 俺の心に、君は刻まれていた。
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