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やはりか……でなければ、どれほど強大な力を持っていても存在するだけで手一杯になるはずだ。
しかし、原因が分かったところで、対処しようにも前例が無さすぎてほぼ手探りになりそうだ。
「ウォルフレッドがそんな顔するとはなぁ……よっぽど追い詰められてるってところか。」
「まぁな……ろくに策も練らずに奴等と対峙するのは今の俺では明らかに無理がある。」
「確かに…俺らは一族の掟で本来の力を公にするのは制限されているからなぁ。迂闊に動けないもどかしさは俺にも理解できる。」
「能力だけでどこまでやれるか……これにかけるしかないのが現状か。」
……何ともまぁ面倒な事になったものだ。このまま奴らを野放しにすればクリスタ中は瞬く間に火の海と化す。
そうなれば、いくらクリスタ最強のギルド〈光の輝石〉といえども、蹂躙は時間の問題になってくるだろう。
仮に俺たち〈影の輝石〉が総力を上げたとしても、十中八九勝率に変化はない。
一体誰が何のためにこんなことを………!
「コーヒー、ごちそうさま。悪いが、今日はこの辺で失礼するよ。待たせている人がいるからな。」
「おう、いつもみたいに代金はいらねぇ。けど、奴らの処理は程々にしろよ。」
俺は「分かっているさ」と言葉を残して、彼の家を出た。そして、〈結晶の柱〉を経由して新しく用意してもらった住居へ戻った。
―ウォルフレッドの家―
「おかえりなさい、ウォルフレッド。珍しく遅かったね……少し心配しちゃった。」
月の光のような白銀の髪に綺麗な赤い瞳の少女は、まだ名前はないが俺に懐いてくれている。
しかし、こんな幼い子に心配をかけさせたのは何となく許しがたいものがある。
紳士と呼ぶにはまだ早い……ということなんだろうな。
「それはご迷惑をおかけしました……仕事上、なかなかご所望の時間に帰宅するのが難しいもので……その点をご了承いただきたいのですが…」
「お仕事なら仕方ないね…ルージュお姉さんも心配してたよ。慣れない職場で上手くやれてるのかなって言ってたよ。」
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