#01 蒼き月の下で

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俺は奴らを激突する直前のところまで誘導した上で、勢いよく地面を蹴り、そのまま上空へ飛んだ。 雷をその身に纏い、チーターも顔負けの速度で迫ってきた奴らも己の速さの凄まじさから発生するダメージで同胞を倒すことになろうとは思わないだろうな。 ……かくして奴らは同士討ちの末、互いが纏った電気が激しくぶつかり合い、凄まじい轟音と共にその動きを止めた。 「依頼達成を確認……速やかに撤退、依頼主へ報告した後、帰投する。」 『了解、了解……相変わらず手際がいいな、ウォルフレッド。』 「何事も手順よく、効率を重視して行うことが大切ですから。」 『んじゃ、気を付けてな。』 俺は依頼主の元へ向かい、依頼された任を完了させたことと、報酬を受け取り、そのまま拠点に帰投した。 ―ギルド本部― 「よっ、お疲れさんだったな……ウォルフレッド。」 中年の男性……俺の所属するギルド〈影の輝石(シャドウプリズン)〉のギルドマスターのゴードン・メルゲートはウイスキーの入ったグラスを片手に俺に労いの言葉をかけてきた。 彼は俺の育ての親とも呼べる存在だ。行くあてもなく彷徨っていたあの日、この男に拾われてから、俺はこの仕事に就いている。 「ありがとうございます、マスターゴードン……本日は少々眠いので、これにて失礼します。」 「おうよ、お疲れさん。」 これが……俺の生活である。 ―クリスタ第一都市・ガーネッタ― 「おはようございます、メイお嬢様。そろそろ起床の時刻でごさいますよ。今日から普通科の学園に通うのでしょう?」 あ~……もう少し寝ていたいよぉ。いくらここが火山を中心に広がる鉱山都市だからって、寒いときは本当に寒いんだから…… ルシアさんも同じ低血圧の人間として気持ちは分かってくれると思ってたのに…… 「お嬢様、起きないのであれば直接お部屋に伺いますよ~!」 ガチャン 「おはよぉ……ルシアさん、今日はずいぶんと早起きなんですね。寝癖がついちゃってますよ。」 「わっ、私のことはいいんです!ほら、早く制服に着替えて食卓に来てくださいね!」
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