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12:今日はなんの日?
ひとつ、私の話に耳を傾けてもらいたい。
まずはじめに、スキップする姿を想像してもらいたいのだ。
人はスキップをするとき、両の腕を交互に振り、両の足を交互に持ち上げて地面を蹴る。無意識に行われるそのスキップはおそらく余程の理由がないかぎり、リズミカルなテンポで軽快な印象を見る者に与えるだろう。
だがその際、両手両足を出来るだけ大きく振り、出来るだけ遠くへ踏み出そうと心がけるだけで、あれほど軽やかだったあなたのスキップはそのテンポを急激に落としてしまう。別段テンポに関しては何も指示を出していないにもかかわらず、腕を大きく振り、腿を高く上げるというだけで、その行為はあなたの前進する速度にまで影響を及ぼすのだ。
これは『マーメイド効果』という名で呼ばれる、れっきとした実験の結果である。実はこれと似たような現象が、この世にはもう一つ存在する。それは、太極拳だ。
太極拳とは世に広く知られた中国拳法であるが、両手両足を用いて他者との格闘を本懐とするその他の武術とは違い、何にも増して、動きが遅い。緩慢とさえ言える。いかに早く敵を打つかという重要なファクターを全力で無視し、蟷螂拳、酔拳などのインパクトやメッセージ性をまるで感じさせない公園遊戯とも勘違いされがちな太極拳には、当然、秘められた重大な理由があるのだが、さきほどの『マーメイド効果』というのは単なる私の嘘である。
そして太極拳がその他多くの中国拳法と違うのが、格闘方法そのものだ。鍛え上げた拳や蹴り技を駆使して敵と相まみえる肉弾戦とは違い、太極拳は練り上げた『気』を武器として操り、用いるのだ。つまり、速さは関係ないのである。あの、軽快なステップで敵を翻弄せんとするスキップならぬ中国カンフーとは違い、太極拳はまさに一撃必殺の波動拳を放つ準備段階に他ならないのだ。この、大技に移行する前段階の動きを『マルコヴィッチダンス』と呼ぶ。
…
…
…
…
もちろん嘘である。
この世は全部嘘である。
ああ、そこの格好良いあなた。
美しいあなた。
読んでしまったのですね?
ふふふ。
リア充の時間をちょっとだけ無駄に使ってやったぜええええ!
メリークリスマス!
これは本当であーる!
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