14:僕は何者だ?

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14:僕は何者だ?

 とても嬉しい事があったので、珍しく日記みたいなことを書いてみたくなりました。  僕は小説家ではないけれど、小説を書いている。昔から極端に友人の少ない僕は妄想をエネルギーとして日々を乗り越えている。  小説を書きたい、と思う前から自然派生的に脳内で架空の人物を動かしているうち、とあることに気が付いた。当たり前かもしれないけど、僕は「僕の理想とする人間」を必要としている。  人恋しいとか友達が欲しいと考えたことはないけど、「こういう人に出会いたい」「僕が好きだと感じる人は、こういう風に考えるだろうな」「こういう話をするだろうな」「こういう生き方を選ぶんだろうな」、そんなことばかりを思うようになっていった。  その結果、僕の思いの全てを注ぎ込んだ作品が『芥川繭子という理由』というカタチになりました。もうすでに完結しているのですが、エブリスタでは現在進行形でホラーを書いている為、更新頻度が低かった。  だけどそんな僕の宝物に、とある読者の方が興味を示してくださり、「とあるサイトも利用しています」という僕の発言を頼りに、既に投稿し終わっているサイトに辿り着き、『繭子』を読んで下さったのです。続きが気になるから、と仰って下さいました。  その方はこのエブリスタと同じネームを使用されていたので、すぐにわかりました。許可を得ていないのでここで紹介はしませんが、本当に嬉しかったです。  『繭子』は一般的な小説と異なり、雑誌記者がバンドのメンバーにインタビューをとる、という会話形式で物語が進行していきます。  これって、小説か?  書いている当初から賛否あるだろうな、と思っていました。僕は言葉の持つ力を信じているので、状況描写に力を費やすよりもまず、「誰が」「何を思い」「どんな言葉を吐き出すのか」という点に重きを置いて、物語を紡いでいこうと決心していました。  その結果、小説とも呼べない作品にも関わらず140万字を越える長編に仕上がりました。  その140万字を、その方は、数日かけて読破してくださいました。  そのサイトでは記事ごとにハートマークをクリックして応援できる機能が設けられているのですが、数時間ごとに、あるいは数十分ごとに、ハートが押されていきました。僕はそれを、仕事中にも関わらず、スマホで見ていました。ページ数にして76話。その全てに、少しずつハートが押されて履歴として残っていく様子は、本当に胸が一杯になる光景でした。  むろん、読んでいなくてもハートは押せます。  だけどもしそうなら、間隔をあけて数日に渡って押していく意味はないですし、理由がわかりません。やはり、読んでいただけたのだと思います。  そして個人的なやりとりではありますが、しっかりと感想もいただけました。  誰かに自分の書いた作品が届く、読んでもらえるって、本当に嬉しいですよね。このエブリスタに来てホラーを書き始めてからもずっとそれは感じているのですが、どこかで、実験的な面もあったりします。  ちゃんとホラーになっているかどうかすら不安に思いながら、演出や、表現方法を模索しながら書いている分、作品としての高見を目指している、と思っています。  だけど、『繭子』は違った。  人が本気で生きるとはどういうことだろうか。  僕はどう生きたいのだろうか。  僕は何者だろうか。  幸せってなんだ。  そんな恥ずかしくて青臭い事を考えながら、登場人物全てに僕の細胞を刷り込んでいった。だからこそ今回『繭子』を読んでいただき、この作品に出会えてよかったという言葉をもらえた時、過去の自分を褒めてやりたい気持ちになりました。 『お前の投げた歪なカタチの槍は、遠く離れた誰かの胸に届いたぞ』  僕の願いが、現実になりました。  もちろん、僕自身の人間性などたかが知れているので物語とは全く切り離して読んでいただきたいですが(笑)、少なくとも『繭子』を書いていた時ずっと考えていたことの答えは、実感として受け取ることが出来ました。  ありがとうございました。  心から感謝いたします。  
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