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18:今日も、明日も、好きか?
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先日お墓参りにいきました。車で1時間ちょいのところにある大きな霊園なのですが、道すがらカーステレオで音楽を聴きながら号泣に近い涙を流す、というほろ苦い夏の思い出を作ってきました。あとになって思い出し、顔が赤くなるくらい涙したその曲とは……。
僕がこれまでに書いてきた作品のどこかにしれっと情報を紛れ込ませたのですが、すでに解散してしまっているバンド「GARNET CROW」に、僕は今でも深い愛を抱いています。
そうです、僕は今からガネクロについて大いに熱弁を振るおうと思っています。興味がない方は回れ右……なんてしないでどうぞ読んでいってくださいな。でもって、新しい窓を開いてYOUTUBEで一曲でも二曲でも彼女たちの曲に触れてみてください。きっと、人生が豊かになる。
……嘘です。そんな大きなことは言いません。だけどGARNET CROWに興味はなくとも、音楽好きな人には読んでもらえると嬉しいなと思います。この記事の最後に、個人的に名曲だと思っている楽曲の名前を掲載しますので、僕が恥ずかしいくらい泣いた名曲もその時に発表します。
彼女らが解散してからもう七年が経つので、ひょっとしたら全然知らない、名前くらいしか聞いたことがない、という方たちも多いと思います。しかしテレビで「名探偵コナン」をよく放映しているようなので、アニメのテーマソングを手掛けていたグループとしてご存じな方もいらっしゃるかもしれませんね。事務所の勢いが最高潮だった90年代後半から00年代前半に、アニメの主題歌を担当したことで彼女たちも一躍スターダムに躍り出ます。しかし、アニメ主題歌で有名になったからこそ敬遠する人たちもいました。僕も当時はそうでした。今でもまったくアニメを見ないので、どこかで偏見がこり固まっているもしれません。昨今の状況がどうかはか分かりませんが、アニメに起用される歌はどこかでその内容とシンクロしていたり、世界観がアニメ寄り、普遍的な音楽ではない、というイメージが当時の僕にはありました。いや、正直に言えば今でも少し、そういう思い込みはあるかもしれません。
アニメに興味はない=そのテーマソングにも興味はない。だけど、聞いてみて損はないよな、という単純な音楽的好奇心が、今日にいたるまで彼女たちの作品を聞き続けるきっかけになったのだから、人生何が起きるか分かりませんよね。そして今回、僕が極私的な目線で話をしていきたい項目は、以下の二つです。
① 「なぜ今でも好きなのか」
② 「個人的な名曲紹介」
ますは①の「なぜ今でも好きなのか」から参りましょうか。つまり、どうしてこんなにも長い間聞いているのか。それは一言でいえば「クオリティの高さ」です。
音楽の素人である僕が、プロのミュージシャンが作った曲を聴いて何を偉そうに語るつもりだ、という話になりかねないので前もって言い訳しますが、「彼女らがデビューした2003年から2020年に至るまでずっと飽きずに聞いているから」、というのが僕なりの根拠です。ただそれだけ、それ以上の話は出来ません。
だけど実際、好きだから、という理由だけでは同じ曲を何年も聴き続けることは難しいと思いませんか? 忘れた頃にCDを引っ張り出してたまに聞く、とかではありません。ずっと聞いているんです。僕が異常に執着心の強い、変質的な傾向のある人物なのかもしれませんが(白目)、やはりそこには、「ずっと聴いていたいと思うだけの質の高さ」があると思うわけです。
ではなぜ、ここまでハイクオリティなのか。
この話をする前に、前提として、彼女らはそもそもバンドを結成する意識をもって集まった人たちではありませんでした。ビーイング、というかつて一世風靡した音楽事務所で仕事をしていた、裏方に近い人材だったわけです。
ゆりっぺ、という愛称で親しまれた中村由利さんは、ボーカリストとして入社したわけではなく主に作曲家として活動していました。ちなみに、バンドが活動していた10年間で発表した曲は、すべてゆりっぺが一人で作曲しています。詳しくは後述しますが、ボーカルで作曲家、というこの類まれな存在が、この先僕が死ぬまで出会うとはないであろう天才として、永遠に輝き続けることと思います。『文乃』シリーズには欠かせない存在、三神幻子のビジュアルイメージは、実を言えばこのゆりっぺだったりします。あくまでも僕が執筆する上でのイメージなので、皆さんは好きにご想像なさってください。
そして様々な愛称で親しまれた作詞家でピアノ担当の、AZUKI七さん。この方は当時ビーイングの大看板だったZARDの坂井泉水さんと双璧を成す美貌、として注目を浴びていました。七さんはガネクロのすべての曲で作詞を担当し、ビーイング系列のほかのアーティストにも詞を提供されていました。そしてバンドとしてはピアノを担当し、ルックス、作詞、演奏と三役をこなしつつ、ゆりっぺとともにガネクロを牽引していたわけです。ちなみに、『文乃』シリーズで「しもつげむら」以降ずっと出ずっぱりの秋月六花のビジュアルイメージは、このAZUKI七さんです。
次に、おかもっちという愛称で親しまれたスタジオミュージシャンで、ギタリストの岡本仁志さん。僕の思うこの方の良さは、前に出過ぎないこと。本物のプロだな、と思います。この方実は作曲も出来て歌も歌えます。ギターのテクニックも一流です。そりゃそうだよ、天下のビーイングで仕事できるんだもの。だけど人柄なのか、特に作品を創作する段階で、縁の下の力持ちに徹する姿勢にはやはり好感が持てます。
そして最後に、ゴッドハンドというあだ名を持つ、キーボード担当で編曲家、古井弘人さん。この方はグループのリーダーあり、楽曲の世界観を作っている人です。作曲家であるゆりっぺがデモ音源で打ち込んだメロディラインを踏まえながら、こういう音で、こういう演奏をしよう、という舵取りを担っていたブレインが彼。
……とまあ、ここまで長々と説明してまいりましたが、当時から「クリエイター集団」と呼ばれていた通り、その道のプロが集まってグループを結成したのが彼女ら、「ガーネットクロウ」だったのです。先程少しアニメの話に触れましたが、彼女らの代名詞になっていたそれらのタイアップ曲には、実は本当の意味での彼女たちらしさは発揮されていない、と僕なんかは思っています。クリエイターとして、
「ご要望の曲はこういうことですね、わかりました、お望みのものを作ります」
と、先方の意図を汲み取って制作したのがいわゆるタイアップシングルで、音楽家として本気を出しているのはアルバム収録曲の方だろう、と個人的には思っています。シングルよりも圧倒的に数の多いアルバム収録曲にこそ名曲が多く、僕がいつまでも聞いていられる由縁も、この辺りに関係しているのではないでしょうか。もちろんシングル曲は発売した瞬間、当時の彼女らの顔となるわけで、駄曲などありません。だけど、例えば彼女らのコンセプトアルバムとして発売されている『B面集』を聞いていて、なぜこの曲がA面シングルじゃないんだ?と首を傾げる作品がゴロゴロ転がっているのもまた事実です。
……続きます。
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