18:今日も、明日も、好きか?

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[2/2]  このバンドで僕が一番好きな部分は、ずばり歌メロの良さと声質の魅力です。つまり、ゆりっぺの存在です。ほとんど、これが全てと言っても過言ではありません。  もちろん、七さんのすごさも、分かってはいるんです。かつて僕が愛したイギリスはシェフィールドから世界に羽ばたいたハードロックバンド、「デフレパード」のボーカル、ジョー・エリオットはこう言いました。 「歌ってる時に気持ちがいい、恰好いい言葉を曲に当てはめて作ってるんだよ」  メッセージなんてねえよ……と。ああ、ク〇格好良い……。  そんなバンドが、かつては天文学的な売り上げ枚数を叩き出し、ライバルはマイケル・ジャクソンと称される所まで登り詰めました。  僕はどこかで、七さんにもこのジョーと同じ気質を感じています。彼女は作詞家ですから、世界観とか自己表現、自己投影を意識したっていいわけです。でも、きっと彼女はそこばかりを優先していない。なぜなら、ボーカルのゆりっぺが歌詞を書いてるわけではない、という事実が受け入れられないほど完璧に、メロディと歌詞がマッチしているからなのです。  意識して考えてみると、普段アーティストが歌を唄っている姿を見た時、なんとなくその歌詞や言葉や気持ちは、その歌い手さんの心情である、という受け取り方をしていませんか? それが普通だと思うんです。作曲に関してはギタリストでもベーシストでもドラムスでも、誰が書いたっていい。それがバンドの作品になる。だけど歌詞に関してだけは、ボーカリストが主導権を握っている、そんな気がしませんか?  だけどGARNET CROWは違う。ゆりっぺと七さんは違う。改めて考えると、これは本当にすごいことだと思います。やがてこの曲を歌うであろうゆりっぺの声や音域を、現実と遜色ないレベルで思い描くことが出来なければ、ここまで気持ちのいい歌詞を当てはめていくことは不可能じゃないでしょうか。もちろん、やろうと思えば誰だって出来ますよ、ただ書いて手渡せばいいだけなら。問題は完成された楽曲の、質の高さです。歌いこなしているボーカリストの実力、と言われればそうかもしれない。だけどきっとそれだけじゃない、七さんの才能も見過ごすことは出来ません。  ……が、とは言いながら、それでもやはり、ゆりっぺの作曲家としての才能、ボーカリストとしての才能、存在感。誰がなんと言っても僕はゆりっぺの存在なくしてガネクロは成立しないと思っています。これはもう、言葉でどれだけ説明しようにも、きっと伝わらないと思います。  昔、日本人なら誰でも知っている大物ミュージシャンの友人である僕の友人(ややこしっ)が、こんな風に僕に教えてくれました。 友「ボーカルにとって一番重要なことはなんだと思う?」 僕「なに? 音程? 音域? ハートの強さ?」 友「ううん。声量なんだって」  ……らしいですよ。僕の意見だってあながち外れじゃないと思いますけどね(笑)。世の中には歌の上手い歌手は一杯います。僕はなにも、ゆりっぺが日本で一番歌が上手いとか、声がでかいとか、そうやって賛美するつもりはありません。だけど、僕が好きになるミュージシャン、特に女性(男性もそうだけど)は皆、唯一無二の声を持っています。誰にも似ていない、誰が聞いても本人だとわかる魅力的な声を持っている。例えば薬師丸ひろ子、川村カオリ、パーソンズのZILL、などがそうです。さらにゆりっぺは、僕の好きな低音のハスキーボイスで聞く者を魅了しつつも、サビでは高音を地声で伸びやかに歌いこなす表現力と音域の広さを持っています。つまり、聞いていてとても気持ちが良い。この「聞いていて気持ちが良い」という点が、僕にとっては何度も繰り返し聞きたくなる最も重要な理由である、と分析しています。  長くなりましたが、ここからは「個人的に名曲だと思う楽曲」を紹介していきたいと思います。 「cried a little」 「Holding you, and swinging」 「未完成な音色」 「スカイブルー」 「holy ground」 「君という光」 「wish」 「pray」 「Marionette Fantasia」 「冷たい影」 「この冬の白さに」 「picture of world」 「世界はまわると言うけれど」 「the firstcry」 「love is a bird」 「Anywhere」 「Rusty Rail」 「まぼろし」 「WEEKEND」 「U」 「風の音だけを聞いて」 「花は咲いて ただ揺れて」 「stay」 「Secret Path」 「恋のあいまに」 「Elysium」 「Over Drive」 「strangers」 「今日と明日と」 「英雄」 「海をゆく獅子」 「closer」 「バタフライノット」  ……なるべく発表順に列挙したつもりですが間違っていたらすみません(誰も分からないと思うけど)。僕は「GARNET CROW」のシリアスなバラードが好きみたいです。ちなみに、上記には僕がつい最近泣いた曲は入っていません。バーっと書いても何が何だか分からないと思いますので、これだけは聞いて欲しいなあと思うランキングベスト10を紹介して終わりたいと思います。  僕が泣いた名曲は、ランキング1位です。 第10位、「Rusty Rail」。 シングルほどの派手さはない、だけど決して地味ではない。心に染み渡る歌詞、歌声、メロディ。こういう曲をアルバムで連発してくるから、彼女らは凄いんだよ。 第9位、「君という光」。 シングルだし、この曲好きな人多いんじゃないかな。綺麗なメロディラインに、伸びやかな声。うん、好きだな。GARNET CROW史上イチニを争うほどの美メロじゃないかなあ。何も言うことなし。 第8位、「Elysium」。 中期に出た、最高傑作との誉高いのアルバム「STAY」から、王道バラード。この曲聞いて「いい」って思わない人とは音楽について語り合えない。それくらい王道。良い曲です。 第7位、「Over Drive」。 バラードではないですが、何て爽やかで気持ちのいい歌声だ、ということでランクイン。この曲と「Secret Path」は彼女らのPOPセンスが爆発しています。元気がない時、元気になりたい時、是非聞いてください。この曲が収録されているアルバムの1曲目、「アオゾラカナタ」もおすすめ。 第6位、「holy ground」。 初期の名バラード。これが1位でもいいくらいの名曲。YOUTUBE上に、仁和寺で行われたライブ模様がアップされているので、これを聞いてもらうと良いかもしれません。素晴らしい。いやー、実に素晴らしい。 第5位、「cried a little」。 イントロ、歌い出し、完璧。いわゆるバラードではないけれど、これはそこいらのバンドには絶対に作れない、天才的センスに溢れた曲だと思います。もし僕の小説が映画化したらテーマソングに起用させてほしい。……夢くらいみたっていいじゃない? 第4位、「Anywhere」。 暗い。オリジナルアルバムの一曲目からこの暗さ、これがまた良い。ゆりっぺは自分で詩を書かない(書けないわけではない)ことが関係してか、エモーショナルに歌う人ではありません。割と淡々と美メロを美声で歌い上げる人ですが、この曲は情念がこもっている。ラストの歌声、余韻を引っ張り上げる歌い終わりは鳥肌ものです。 第3位、「恋のあいまに」。 王道な美メロを得意としているだけあって、めちゃくちゃ気持ちいい。曲展開は割と聞きやすく、奇をてらったことをしない代わりに、ちゃんとツボを押さえた歌に仕上げてくる。この歌メロの気持ち良さは、サビで100%花開く、という感じ。しばらくはずっと不動の1位だった、くらい好きでよく聞いている曲。 第2位、「海をゆく獅子」。 ラストアルバム収録。何度も言うように、GARNET CROWの曲は全部ゆりっぺが作曲しています。オリジナルアルバムが10枚発売されていて、仮に1枚10曲と計算しても単純に100曲です。もちろんアルバム未収録もあれば、10曲以上入ってるアルバムもざら。一人でこれだけの曲数を書いて、ラストアルバムでまだこんな曲かけるの?と心底驚きました。PV映像、世界観、演奏技術、歌声、全てが完成しきっていました。秀逸とはまさにこのこと。ただのアニソンバンドじゃないんだよ、彼女らは。きっと七さんが名付けたであろう曲名も素敵。 そして、第1位、「THE CRACK-UP」。 もちろん、名曲です。誰がなんと言おうと、歌声、歌詞、メロディ、全てにおいてパーフェクト。だけど僕がこの曲を聞いて車の中で涙した理由は、きっと「今」である事も関係しているのだと思います。 「光なら既に失った」 という歌い出し。コロナ禍によってこれまで通りの日常は戻らないと言われている今、失ったものやこれから先の未来を考え不安に胸が痛む時、是非、「世界はその形を変えてゆける」と歌うこの曲を聞いて欲しいです。
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