4:最初に宣伝って言った方がいいかな?

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4:最初に宣伝って言った方がいいかな?

 この連載の一回目で、僕は「自分の生み出した妄想の人物たちと同じ時間を生きたい」と書いた。書いていて己でぞっとしたので深く掘り下げずにトンズラこいちまいましたが、やはりそこは本心だったりする。  いまいち意味が分かり辛いかもしれないが、要は、「ただこの物語を書くためだけに創り上げたキャラクターではない」、と言う事が言いたいのだ。今僕が連載している『文乃』シリーズのキャラクターたちも、当然架空の人物ではある。だけども、今僕がこれを書いている同じ世界の同じ時間軸で生きているのである。…そういう設定なんである。  具体的に言うと、これは一度(もしかしたら二度三度)つぶやきの方にも書いたかもしれないが、僕が書いた作品はどれも同一世界の物語だ。  焦点を当てる人物や描きたいテーマが違うだけで、同じ世界なのである。ホラー作品を手掛けたのは『文乃』が初めてだが、だからといってホラー用に新たな世界を作る気にはならなかった。恐怖や不可解な現象なんて、どの世界だろうと必ず巻き起こっている筈だからだ。  『文乃』シリーズ一作目に、文乃の親友として「池脇竜二」という男が登場する。この池脇竜二の父親、「池脇竜雄」と彼の幼馴染である「伊澄銀一」、そしてその周辺を主役に据え、年代を昭和四十年代にして書いた物語が『風の街エレジー』という細々と連載を続けているクライムノベルなのである。  『文乃』の時代背景が平成十一年、1999年だ。文乃と池脇はともに二十四歳であり、彼らの親世代が若くまだ二十歳だった頃の物語であるから、昭和四十四年、1969年が舞台背景となっている。登場人物たちにも因果関係をもたせており、『風の街エレジー』に重要な役割で登場する人物の名は、「西荻平左」という。文乃の姓が西荻であることと無関係ではなく、もしも両作品ともに読んでくださった仏のように慈悲深い読者様がいれば、「ん?」と引っ掛かりを覚えてくれることだろう。もちろん『風の街エレジー』に文乃は出て来ないし、逆もまたしかりだ。同じ世界の中で巻き起こる、世代の違う人物たちのお話なのだと、そう言いたいだけである。  そして他の作品にも同様の事がいえる。今度は時代が現代に近づき、2016年を背景に書いた作品では、「池脇竜二」が四十歳になっている。『風の街エレジー』に登場した四人の幼馴染たちの息子、その四人が現代でバンドを組む。そしてそのうち一人が病で倒れ、その後、高校を卒業したばかりの十八歳の少女、「芥川繭子」が加入するという一風変わった物語である。  タイトルは、『芥川繭子という理由』。僕の原点である。  何を隠そう、この繭子の物語から、彼女たちの生きる世界は命を持ち始めたのだ。全てはここらは始まっている。『文乃』の時代背景が平成十一年なのも、別段理由があったわけじゃない。彼女の親友として若き日の池脇竜二を出したかったがために、2016年から逆算しただけなのだ。  時系列順に見ても、昭和四十年から平成後期までの間に幾つもの物語を書いて来た。今の所、この作風を変えるつもりはない。  もちろん、今ここで僕が説明したから「へー、そうなんだ」と思えるだけで、個々の物語自体にそんな予備知識は必要ない。知らなくても全然読める。  ただ単に僕が好きなのだ、こういうことが。  男たち女たちの人生や、営みや、紡がれる命の物語、そういった時間に流されることなく留まり続ける、熱い血潮とか、記憶とか、匂いとか。  そういったものを書きつづけ、僕は僕だけの世界を創りたい。…のだろう。いきなりでかい目標をぶち上げたように見えて、妄想自体は趣味だからずーっと前から思い続けていることなんだけども。  お暇があれば、今後もお付き合いいただけると嬉しいです。  偉そうに色々言いましたが、ええ、そうですよ。  宣伝です。
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