遠くへ "いく" 事

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遠くへ行ってしまった。今ならわかる。 両親は、遠くへ逝ってしまったのだ。 今になってやっと分かるようになった。 小学校の授業参観も運動会もみんなのお母さんは来ているのに自分のお母さんだけこない理由も、その度におばさんが来て「ごめんね。」と言っていた訳も。 謝ることなんて何もないのに。 おばさんはいつでも優しい人だった。 いつも笑顔で。その顔はお母さんとよく似ていた。 私に反抗期が来てどれだけ当たり散らしても、毎日お弁当を作ってくれた。 部活で帰りが遅くなっても、決して先に食べる事はなく 「おかえり、茜ちゃん。ご飯温めるからちょっと待っててね。」なんて言って出迎えてくれた。 他にもお金がかかっても、行きたい大学行かせてくれたり数えたらきりがない。 あの時から私、本当に大きくなった。おばさんの身長も抜いてしまった。 おばさんは少し、小さくなった気がする。 おばさんが遠くに旅立つ日も、近いかもしれない。 ねぇ、おばさん。今まで私のことを我が子のように育ててくれてありがとう。 私は結婚します。彼の仕事の都合で、海外に住むことになりました。 お母さん達とは違う意味で遠く行きます。 私は幸せです。
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