パステルカラーとモンスター

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パステルカラーとモンスター

それから僕はもふ丸と生活をともにした。 もちろん大田以外には内緒だが、学校に行くときも遊びに行くときも、寝ても覚めても、僕らは一緒だった。 学校に行くときは家においていこうとしたのだが、もふ丸がそうさせてくれなかった。一緒に連れて行くまで意地でも僕の肩から離れない。無理やり離そうとしても、器用に肩から肩に飛んで逃げ捕まえられない。結局、かばんの中や襟に隠れるのを条件に連れて行くことになった。 はじめは一緒にいることに戸惑いが大きかったが、次第に一緒にいていろんなもふ丸を発見するのが楽しくなった。 例えば、あんなに雨の中で震えていたくせに、僕とは正反対で、もふ丸は雨の日が好きだった。雨が降ると小さな体をぴょんぴょんさせて僕を外に誘う。僕の肩に乗って外に出ると、傘からなる雨音に身体をゆらして喜び、僕の首にスリスリとすり寄ってくる。たまに雷がなると驚いて僕の襟の中に隠れるが、それでも雨の日は決まって散歩をせがんできた。 また、もふ丸は紫陽花も好きだった。雨でも晴れでも、紫陽花を見つけると、まるで大発見をしたかのように嬉しそうに飛び跳ね、花や葉の上を行ったり来たりした。でもカタツムリがとても苦手で、紫陽花の上でカタツムリに出会うと震え上がり、僕のもとへ一目散に逃げてきた。ぎゅっと目をつむり、僕にくっついてふるふると震えるもふ丸を見て、自然と笑みがこぼれ落ちた。 雨の日嫌いな僕も最初こそ嫌がったが、だんだんともふ丸と散歩をするのが楽しくなり、自らすすんで雨の中に出ることが多くなった。 僕の毎日はもふ丸と出会ってガラリと変わった。 いや、生活が一変したわけではない。僕の生活リズムはほとんどいつも通り。ただそこにもふ丸がいる、たったそれだけのこと。 それなのに、曇天のような僕の日常はパステルカラーのようなふわりとした優しくて明るい色がついたような気がした。 幼い頃に親を亡くし、親戚のうちにお世話になり始めてから何事にも無頓着だった僕に、初めて家族といえるような存在ができた。
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