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「ねえ、和人」
「どうしたの、改まって」
「今日はね、どうしてもここで言いたいことがあったの」
和人の心臓がドクンと跳ねる。胸がドキドキする。急にかしこまった態度の加奈子を前に、和人は何だかよからぬ想像をした。もしかして、和人にとって考えたくもない、衝撃的なことを告げられるのでは。一瞬のうちに様々な思考が脳裏で行き交い、和人は少し身構える。
「…一体、それはなんだい」
「あのね…」
もじもじしながら、加奈子は背負っていたリュックサックをごそごそと弄る。そして、中に入っていた何かを一気に取り出した。それは、リボンが結ばれ包装された袋だった。
「誕生日、おめでとう!」
「…へ?」
予想だにせず、和人は戸惑った。誕生日?一瞬停止した頭の中で、和人は考えた。言われてみれば、確かに今日は和人の誕生日だった。ここ最近、加奈子のことばかり考えていてすっかり忘れていた。
「これ、プレゼント!先週、友達に付き合って貰って買ったんだあ」
屈託のない笑顔で加奈子はリボン付きの包装を和人に手渡した。和人は込み上げてくる嬉しさに思わず涙が出そうになる。同時に、散々加奈子を疑ったことを心底恥じた。全ては和人の妄想に過ぎなかった。あのどす黒い感情は、和人自身だった。
「…ありがとう。嬉しい、本当に。泣きそうかも」
「そんなに嬉しい?サプライズ大成功じゃん」
加奈子はVサインをして、歯を見せて笑った。無邪気な加奈子を見て、和人の中の様々な感情が浄化されるような感覚に浸る。
「プレゼントは恥ずかしいから家に帰ってから開けてね。その、手紙とかも入ってるし」
ごにょごにょと赤面しながら言う加奈子に、和人は衝動を抑えきれず、加奈子を抱きしめた。
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