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「ちょ、和人。みんな見てるよお」
「加奈子、好きだ。大好きだ」
至近距離で加奈子の目を見ながら、和人は言った。加奈子は見る見るうちに赤面し、耳まで真っ赤にする。遅れて、和人も自分の行動が急に恥ずかしくなり、体の芯から熱く火照る感覚を覚える。
「ご、ごめん急に」
和人は加奈子を離し、視線を逸らした。加奈子も地面を見つめ、もじもじしている。
「…ううん、びっくりしたけど、嬉しいや」
まだ赤面している加奈子が、はにかみながら言う。
「私も和人が大好きだよ」
「あ、ありがとう」
お互い照れながらも、表情は朗らかだった。確かめるように手を握り、和人と加奈子は幸せを噛み締めた。
「お、お腹空いちゃったね。レストラン予約してるんだあ。ちょっと早いけど歩いて行こっか」
二人は夕日を背にして、繁華街の方へと歩き出した。この瞬間、和人は全ての答えが分かった。加奈子を疑う気持ちや、加奈子を愛おしいと強く思う感情。それは、名前を口にすると酷くネガティブな印象を受ける。しかし、それがあるから愛情は強くなるのかもそれない。その日、和人は出会ってしまったのだ。愛ゆえの、その感情に。
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