5人が本棚に入れています
本棚に追加
*
もう暗闇の世界はどこにもない。暗黒で埋め尽くされていたその世界は、大きな光に照らされ全て浄化された。黒く染まった僕も、すっかり元の色を取り戻した。いや、元の色以上に彩りを持って生まれ変わったかもしれない。
暗闇は、もしかしたら色を持った僕自身が生み出したのかもしれない。光と影は常に表裏一体だ。光が影を強くするのか、影が光を強くするのか。ただ言えることは、今回はその影にあたるこの感情のおかげで、愛情と言う僕自身の色が濃くなった。そう思うと、その黒い感情も奴らも無駄ではないのかもしれない。いわば共存の世界だ。
際限なく生まれていた奴らは、僕の中の疑いと感情だった、一つ一つ名前を付けようとした自分が馬鹿馬鹿しく、笑ってしまう。
そして、それを生み出していたどす黒い闇。それは、紛れもなく『嫉妬』だ。嫉妬の感情を、僕は生まれて初めて知ったのだ。それは際限なく人を疑うことが出来るし、場合によっては愛を強くするかもしれない。
いずれにしても、僕は出立ったのだ。殺してしまいたいほど憎いが、決して手放すことが出来ない、嫉妬という感情に。
僕は光に照らされた世界で、小さな黒い球体を抱えながら、すやすやと眠った。
最初のコメントを投稿しよう!