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暗い闇の世界では、相変わらず僕一人だ。心なしか闇はその濃さを増している。
闇からは、またあの何かが生まれ落ちた。あいつは敵だ。僕の中で警鐘が鳴る。今度こそは。拳を握りしめ、真っ黒なそいつに殴りかかった。
眼前にすると、そいつは自分と同じ背丈くらいで、憎たらしいことにやはり人間の形をしている。顔が一つに胴も一つ、手足が二本ずつ。しかし、色は真っ黒で不気味なことこの上無かった。
僕は何度も殴りつける。無抵抗なそいつを、何度も、何度も。一心不乱に拳を打ち付け続けた後、我に返った頃にはそいつはいなくなっていた。
それと同時に、心がすうっと落ち着きを取り戻していく。さっきまでのあの燃え上がるような感情は何だったのか。深く考えるには手に余るように思え、僕は考えることを止めた。依然として、見渡す限り暗黒の世界は壁も天井も底も無い。
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