インザダーク

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 目が覚めると、そこは真っ暗闇の世界だった。その世界で、自分だけが息をしている。  闇に染まり切った世界の中で、自分だけが色を保っている。自分の手のひらを見て、まだ飲み込まれていないな、という感覚を持った。飲み込まれる?何に?その答え自体は分からない。  辺りを見回すと、暗い空間の一部から、何かが不揃いな円形に膨らみ、雫のように地面に垂れ落ち、やがて人の形をした何かになった。暗闇の世界から同じく真っ黒な色をしたそれは、しかしながら世界とは異なった濃度で生まれ落ちたのだ。  僕はその何かを敵だと認識した。倒さなければ。拳を握り、その何かに殴りかかろうとする。しかし、そう思った直後、まるで初めからそこには何もいなかったかのように、それは姿を消した。  今のは一体何だったんだ。悩めど答えは見つからない。残ったのは全てを覆うような強大な黒と、何とか色を持った自分だけだった。
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