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プロローグ
ミントグリーンの屋根にクリーム色の壁。まるでクリームソーダを上下逆さまにしたような外観のアパートには「サカメロ」と刻まれている。オーナー曰く「逆さまにしたメロンソーダ」を縮めて「サカメロ」らしい。
その少し変わった外観と、略語に不馴れなご老人が付けたかのようなアパート名の住人に、悩める者有り。
今夜は何にしよう……。
アパートの階段を上りながら、疲れた頭で毎日の献立に苦しむ主婦のような悩みに考えを巡らせていると、どこからともなく答えが降ってきた。
「カレー」
そうだ、まだ野菜室には人参が3本も残っていた。じゃがいももある。肉は……豚肉が少し。
意外と自分の頭が働いていることにほっとする。階段を上る足取りは重たいが、思考ははっきりしているようだ。
瑞香は大学への入学を機に一人暮らしを始めたはいいものの、始まったばかりの大学生生活、授業、家事に戸惑いながらも何とか毎日を過ごしていた。
アルバイトももうすぐ始めないといけないし、しっかりしなくてはと自分を鼓舞する。
――瑞香ちゃんはしっかり者だね。
始まりは幼稚園の先生の言葉だった。そう言われたきっかけは至極単純なことだった。
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