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「瑞香さん」
立ちくらみでよろめいた瑞香の体を秋月に抱き止められて、そっと囁かれた自分の名前に心臓が跳ね上がる。
急に体が熱く、気だるくなってどうにも動けない。彼の成すがままに抱き抱えられて、再びベッドへ運ばれる。
「無理、してたんじゃないですか。他人に迷惑かけないように、一人で何でも全部やろうとして、それでこんなに疲れてたんじゃないですか
「……そんな、こと」
ふわり、と布団をかけられて、ぼんやりした意識で初めて彼の苦しそうな顔が目に入った。
「俺も夏月に心配かけないようにって、頑張って、頑張り過ぎて仕事場で倒れたことがあります。仕事の仲間にも迷惑かけたし、夏月にも心配かけた。でも、夏月が言ってくれたんです」
頭痛がし始めて、もう息も苦しくなりかけているけれど、なぜだかぽつりぽつりと紡ぐ彼の言葉は、優しい雨のように降り注いで、心地いい。
「大事な人の心配くらいさせろ、って。一人で頑張るなって。瑞香さんがどういう気持ちで一人暮らしをしていて、それを見守っている人がいるのかなんておれにはわからないけど、きっと一人で完璧に、全部頑張る必要なんてないです。ゆっくりで、少しずつでいいんです。一緒に頑張って行きましょう」
秋月はそういって、瑞香の眠りを誘うように額に手を当てて、
「今は、おやすみなさい」
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