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今夜はカレー
「ポークですか。そうします、ありがとうございます」
見知らぬ男子高校生――制服を来ているので、コスプレとかでなければ高校生で間違いない――は瑞香の答えに満足したようで、すたすたと階段を上りきって、部屋に入ろうとする。
「ちょっと、あの!」
「はい?」
「……何してるんですか」
「部屋に戻ってカレーを作ろうかと」
何をぬけぬけと言っているのかと、瑞香もつかつか階段を上ってちょうど自分の部屋の前で身分を名乗る。
「私、302号室の市原です。そこ、私の知り合いの女の子の部屋なんですけど」
知り合いと呼ぶには少し戸惑いがあったが、顔見知りであることには違いないので間違ってはいないだろう。それに何より、この不法侵入者かもしれない彼をこのまま思惑通り侵入させる訳にもいかない。
瑞香の隣人、301号室の住人は瑞香と同じ大学で、学科も同じだったはずだ。はず、というのも瑞香の在籍する学科は人数が多く、まだ入学して2ヶ月余りで、全員の顔と名前を一致させる程には把握しきれていないのである。
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