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さすがに顔見知りの隣人が現れたとなっては、諦めて退散するだろう。空き巣だかストーカーだか知らないが、疲れているのに警察沙汰にでもなって事情聴取を受けるなんて真っ平だった。
後で隣の人には顛末を説明して、以後用心するように伝えればいい。そう思っていた。
「あー、もしかして同じ学科の人?」
「もうこれ以上無駄なお芝居はさっさとやめて、正直に――」
「あれ、秋月?」
瑞香の後方で声がしたと思ったら、隣人の彼女だった。瑞香とその前の彼を見てきょとんとした顔をしている。
「佐倉さん、今この子が……って、佐倉さん?」
「佐倉です」
はっとした瑞香の問いにきょとんとした顔のまま答える。
後ろの彼を振り返って、彼女にしたようにもう一度問う。
「佐倉です」
小さく右手を挙げて何とはなしに答える男子高校生――。おそらく合点がいった。
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