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「……二人は姉弟?」
「いえす」
見事に揃った声に瑞香はがっくりと項垂れた。今日の活動エネルギーはもうたった今、消費された。
二人に名前を呼ばれた気がしたけれど、疲れ果てた瑞香の鼓膜には届いても脳には伝達されなかった。
* * *
小気味良く聞こえる調理器具の音とガスのはぜる音、鼻腔を掠めるいい匂いでぼんやりと意識が戻った。天井はよく知ったものに見えるが、他人の家の匂いというやつがした。
意識がはっきりしてきて、跳ね起きると手洗い場から出てきた彼女に顔を覗き込まれる。
「大丈夫? 急に倒れるからびっくりしたよー」
「へ、平気。ごめんなさい、迷惑かけて」
彼女の近づいた顔から化粧品の甘い香りがして、なぜかくらっとしそうになった。こういう女子力の高そうな、洗練された同姓はどうも免疫がないためか直視できない。
「……市原さん、だっけ」
「はい」
直視できないのに、ものすごく至近距離からこちらを凝視されている。変な汗が吹き出そうだ。
「あなた、バニラアイスみたい」
「……えっ?」
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